自衛官の”高額療養費制度”を解説!これを知らずして保険の見直しはあり得ない

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こんにちは!家計防衛隊長 佐々木拓也です。

今日は「自衛官の高額療養費制度」について解説をします。

保険を語る上でとても重要な制度ですが、「聞いたことはあるけれど…」という方が多いと思いますので、しっかりバッチリ分かりやすくお話したいと思います。

目次

高額療養費制度とは

高額療養費制度というのは「医療費の自己負担額を減らしてくれる制度」です。

日本は「国民皆保険制度」となっており、皆何らかの健康保険証を持っているはず。それを病院に提示することにより基本3割の自己負担で済みます。

「厚生労働省 我が国の医療保険について」より引用
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html

3割負担ということは、逆に言えば7割オフ。100万円の医療費がかかっても70万円割引の30万円の自己負担で済むというのは素直にスゴイ。さすが日本が誇る国民皆保険制度ですね。

とは言え30万円の負担もなかなかのもの。これをノーダメージと感じる方は少ないのではないでしょうか。

そこで登場するのが高額療養費制度。3割負担でもなお医療費負担が”一定の金額”を超えた場合に利用できます。

この一定の金額=自己負担限度額は、その人の収入のレベルによって変わります。

どの健康保険制度に加入しているかによって収入の判定基準が違うのですが、防衛省共済組合の場合はこうです。

自衛官の場合は、”標準報酬月額”という基準で上限額が決まります。

標準報酬月額についての詳しい説明はここでは省きますが、ザックリ言うとあなたの収入を切りよくレベル分けしたものです。

では、自分がア〜オのどの区分に当てはまるのかは、どうやって判定するのでしょうか。

実は給与明細にそのヒントが記載されているのです。ここから先はぜひ給与明細をご覧になりながら読み勧めてくださいね。

標準報酬月額の判定法

標準報酬月額を判定するためのヒントは給与明細のここに記載されています。

給与明細の左側に”短期”という項目がありますね。これはいわゆる健康保険料です。これを支払っていることで自衛官診療証および組合員証が支給され、3割負担で医療を受けることができます。

その”短期”の脇に”◯◯級”と記載されています。これがあなたの収入のレベル=標準報酬月額のレベルになります。上記の例だと”23級”ですね。

ただ、これだけでは”ア〜オ”のどの区分に当てはまるのか分かりませんので、これを金額に変換する必要があります。それがこちらの表です。

共済のしおり Good Life P20

上記の表の左側を見ると、短期23級の標準報酬月額は41万円であることが分かります。

自分の標準報酬月額が分かったところで、高額療養費制度のア〜オのどこに当てはまるのかを見てみると…

ウの計算式を使えばいいということが分かりました。この計算式を使って高額療養費制度の医療費の上限額を試算してみましょう。

高額療養費制度を利用した場合の医療費の上限額の試算

例えばひと月の医療費が100万円かかったとしましょう。当初は3割負担なので…

医療費 100万円 × 自己負担率 30% = 30万円

となり一旦窓口で支払いますが、ここで高額療養費制度を申請すると…

ウ:80,100円 + (医療費 100万円 ー 267,000円 )×1% = 自己負担限度額 87,430円

上記の金額がひと月(1日〜月末)の医療費の自己負担限度額となるので、当初窓口で支払った自己負担額との差額が後ほど還付されます。今回のケースで言うと…

3割負担分 30万円 ー 自己負担限度額 87,430円 = 還付額 212,570円

が後日還付されるということになります。

つまり、100万円分の医療を受けたとしても約9万円の自己負担で済むのです。これが高額療養費制度です。素晴らしい制度でしょう!

このように高額療養費制度を利用すれば、月の医療費の上限は約9万円程度(ウの計算式の場合)で済む可能性があるということがお分かり頂けたかと思います。

高額療養費制度によって医療費が軽減されるとは言え、重い病気等で療養が長期化した場合は少し話は変わってきますよね。約9万円が毎月発生するとなると、かなりの負担になるかと思います。

しかし、そういった場合にさらに負担を軽減してくれる機能が高額療養費制度にはあります。

多数該当

それが”多数該当”です。

グッドライフの説明によると…

同一世帯で、12ヶ月以内に高額療養費を支給した月が3月以上ある場合、世帯の医療費負担を軽減するために、4月目からの高額療養費算定基準額が次のとおり減額となります。

共済のしおり Good Life P63

直近12ヶ月で3回以上高額療養費制度の適用があれば、自己負担限度額がさらに下がります。それがこちら。

つまり、先程の試算で使用したウ区分の方が多数該当適用となれば、月の医療費の上限は44,400円となるわけです。

仮に毎月100万円の医療費が発生し、12ヶ月連続で高額療養費制度を使い続けた場合の自己負担額は…

1〜3ヶ月 :87,430円×3ヶ月=約26万円
4〜12ヶ月:44,400円×9ヶ月=約40万円
12ヶ月間の合計:約66万円

となります。これが1年間の医療費負担の上限と考えた場合、あなたにとって負担しきれるかどうかが医療保険などを検討する一つの基準となるのではないでしょうか。

限度額適用認定証

高額療養費制度を使用する場合…

① 窓口で3割負担分を支払い → ② 高額療養費の支給申請 → ③ 後日還付

という流れになります。

100万円の医療費が発生した例で言うと、3割負担分の30万円を一旦支払う事になるので、後日還付されるとは言え負担に感じる方も多いと思います。

それを回避するための方法として、「限度額適用認定証」を発行してもらうという方法があります。

これを利用すると流れはこう変わります。

① 限度額適用認定証の発行を事前申請 → ② 窓口で高額療養費制度の自己負担限度額を支払い

最初から高額療養費制度の自己負担限度額だけ支払えばOKになるのです。

最終的な自己負担額はどちらも同じではあるのですが、認定証をもらっておいた方がより負担感が減ることは間違いありません。

入院などの日程が事前に分かっている場合は、部隊の担当者に認定証の発行をお願いしておくとよいでしょう。

注意点

高額療養費制度はとても素晴らしい制度なのですが、いくつか注意点があります。

  • 対象となるのは公的医療保険の対象となる医療のみ。自由診療や先進医療、食事代や個室代は対象外。
  • ひと月とは1日〜月末までを言うため、月をまたぐ場合は自己負担額が分散してしまい対象とならない場合がある。
  • 複数の医療機関を使うと合算されない場合がある。

加えて、ひと月の自己負担限度額は「その人の収入によって変わる」という点も注意してください。

ネット情報を見る限り「ひと月の上限は一律8万円」のように捉えられる情報が多いように感じます。あくまでも自分自身の収入だとどの計算式を使うのかを確認してくださいね。

高額療養費制度は基本的には良い制度ではあるのですが、上記のように一筋縄では行かないところもあるので、よくよく担当者や担当部署に確認しておくことをオススメします。

何事も使いこなせてナンボですからね。

この制度を考慮しない保険の見直しはあり得ない

高額療養費制度は保険の見直しなどをする場合の土台となるものであり、この制度を考慮しない保険の見直しはあり得ません。

3割負担とは言え医療費が高額になるかも…

と言うのと、

高額療養費制度があるから、ひと月の医療費には上限があるんだな…

と言うのでは、どれくらい保険に加入するかの判断は大きく変わってきますからね。

よって保険の見直し相談をする場合も、この制度を考慮した提案をしてくれるかどうかも見ておくと、本当に信頼できる人かどうかの一つの材料となると思います。

高額療養費制度と間違いやすいもの

ということで今回は高額療養費制度について解説しましたが、ご理解頂けたでしょうか。

高額療養費制度と混同されがちなものとして確定申告の「医療費控除」がありますが、それとはぜんぜん別物。

  • 高額療養費制度:医療費の自己負担額を減らしてくれる制度(社会保険の話)
  • 医療費控除:医療費がかかった分、課税所得を減らしてくれる制度(税金の話)

医療費控除は所得控除という節税の話であり、どちらかと言うと”生命保険料控除”やiDeCoの”小規模企業共済等掛金控除”等と同じカテゴリーの話になります。この辺の話も分かってくると面白いですね。

保険の土台は公的保障

保険の土台となるのは公的保障です。

公的保障で足りない部分を民間の保険で補完していくというのが本来あるべき姿です。

まずは、あなたが今すでに持っているものをまず確認すること。そしてどの部分がどれくらい足りないのか、必要なのかを見極めることが保険の見直しの第一歩です。

ぜひ本記事を何度も繰り返しお読み頂き、土台となる本制度を腑に落として活用して頂ければと思います。

最後になりますが、実は自衛官には自己負担額をもう一段下げる制度が存在します。これがまたすごい制度なのですが、これについてはまた今度。

それでは家計防衛隊長 佐々木拓也でした!

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