こんにちは。家計防衛隊 佐々木です。
あなたは”一部負担金払戻金”という制度をご存知ですか?
実は高額療養費制度を上回る効果がある制度なのですが、ほとんどの方がご存じないと思います。今まで「知ってる!」という方には出会ったことがありません。
今日は誰も教えてくれない”一部負担金払戻金制度”について解説します。
高額療養費制度の続編になりますので、まずは下記の記事に目を通してから本記事をご覧頂けるとより理解が深まるかと思います。
高額療養費制度以上の負担軽減効果
「一部負担金払戻制度」とは医療費の自己負担を軽減してくれる制度です。前々回の記事で解説した「高額療養費制度」と同じカテゴリーの制度で、民間企業で言う「付加給付」と同じような制度ですね。
高額療養費制度だけでもかなりの軽減効果がありましたが、本制度はそれを更に上回る効果があります。
どこまで軽減してくれるかは、高額療養費制度と同じように収入のレベル(=標準報酬月額)によって変わります。
ここから先はご自分の給与明細をご準備の上で読み進めてください。
一部負担払戻金の自己負担限度額
一部負担金払戻金制度の自己負担負担限度額は、下記のとおりです。
高額療養費制度はア〜オのご段階でしたが、本制度はア・イの2段階になっており、標準報酬月額50万円を境に自己負担限度額が変わります。
標準報酬月額が50万円以下の方であれば、ひと月の医療費の自己負担は25,000円までとなり、それ以上は還付されるといことになります。恐るべし。
ではあなたはアとイ、どちらの区分に当てはまるのか。ヒントは給与明細にあります。
標準報酬月額の調べ方
高額療養費制度の記事の中でも解説していますが、こちらでも解説します。
必要なのは次の2つ。
- 給与明細
- 共済のしおり GoodLife
まずは給与明細のここを確認します。
「短期」という項目が民間で言う健康保険料のこと。その右側に記載されている「◯級」というのが、標準報酬月額の等級を表しています。今回の例であれば「23級」ですね。
次がこの「23級」の標準報酬月額はいくらなのかですが、それを確認するときに使うのが「共済のしおり GoodLife」です。
「共済のしおり GoodLife(令和2・3年版)」のP20を御覧ください。下記の表が掲載されているはずです。
この表の左側に短期という列があり、等級に応じた標準報酬月額が記載されています。
例に上げた「23級」を見てみると…
23級の標準報酬月額は「410,000円」であることが分かりました。ここで最初の表に戻ってみると…
標準報酬月額50万円以下の「区分イ」になるので、ひと月の医療費負担の上限額は25,000円であるということになります。いやはやすごい制度ですね。
注意点
素晴らしい制度ですが、いくつか注意点があります。基本的には高額療養費制度と同じですが…
- 対象となるのは公的医療保険の対象となる医療のみ。自由診療や先進医療、食事代や個室代は対象外。
- ひと月とは1日〜月末までを言うため、月をまたぐ場合は自己負担額が分散してしまい対象とならない場合がある。
- 複数の医療機関を使うと合算されない場合がある。
- 本制度が利用できるのは「組合員本人のみ」であり、「被扶養者」は利用できない。
- 利用できるのは現役中のみ。
残念ながら利用できるのは自衛官本人のみとなりますので、その点は特にご注意ください。また、退職すれば利用できなくなる点もご注意ください。
取りこぼしている可能性も
本制度も基本的には申請することによって支給されることになりますが、制度を知らないことによって「使えるのに使っていない」という可能性もあります。
実際に私のお客様でも取りこぼしている事例がありました。
保険見直し相談の際に本制度を紹介したところ、
あれ?最近入院したのだけど、自己負担が17、8万円くらいでした。もしかしてこの制度適用されていないかも…
その方は高額療養費制度の区分が「イ」の方だったので、自己負担限度額が17、8万円なのは分かります。
ただ、今回は自衛官本人の入院だったので「一部負担金払戻金制度」が適用され、上限が5万円になるはずです。
それは適用されていない可能性があるので、担当者に確認した方がいいですね。
と言うアドバイスをしました。その結果…
やはり適用されていませんでした!改めて申請したところ、差額の十数万円が還付されました!!ありがとうございました!
と非常に喜んで頂けました。
今回の件は担当者が本制度の存在を把握していなかったことが原因でした。もしこのまま知らずにいたら、いずれ時効を迎え本来戻ってくるはずの十数万円は消えてなくなっていたでしょう。恐ろしい…
「知っているかどうかで大きな差が出る」ということを実感した事例でした。おそらく同じような事例もあると思いますので、少しでも思い当たる節がある方は確認してみることをオススメします。
多くの担当者は適用されるべき時は先行して声をかけてくれるかと思いますが、担当者が変わったばかりで制度が把握しきれていない場合などもあるかと思います。
今回の記事をここまでご覧くださった方は「一部負担金払戻金制度」について理解して頂けたと思いますので、ぜひ自ら進んで確認してください。
素晴らしい制度ではあるが…
本制度は本当に素晴らしい制度ではありますが、制度存続という点は注意しておく必要があるかもしれません。
他の公務員組織や大企業を中心に同じような制度はあるのですが、近年は廃止や見直しのケースも増えています。
「付加給付 見直し」のように検索するだけでもいくつか出てきます。
防衛省共済組合での見直しの話はまだ聞いていませんが、世の中の流れとしてこのような状況でもあるので、本制度についてこれからも動向を見守っていきたいと思います。
我々にとて素晴らしい制度は、運営する側には負担の重い制度ですからね。
知った上でどう備えるか
高額療養費制度と同じように、今回紹介した「一部負担払戻金制度」は保険を見直す上での土台となる制度です。
「この制度を知った上でどう備えるか」
これが大切です。本制度の存在を知っているかどうかで、保険への入り方は大きく変わってくるはずです。
正しい知識の土台があってこそ適正な保険の見直しが可能となりますので、高額療養費制度と本記事を何度もお読み頂き、保険を見直す際の判断材料にして頂ければと思います。
コメント
コメント一覧 (1件)
佐々木 様
ブログを拝見し、いつも勉強させていただいております。有益な情報を提供くださり、大変ありがとうございます。
今回、一部負担金払戻金について疑問があり、初めて質問させていただきます。
高額療養費制度は標準報酬月額に応じて、自己負担上限額が算式により決定されます。一部負担金払戻金は、算式による自己負担上限額から、約50万円を基準とするア若しくはイの5万円か2万5千円の何れかを差し引くという理解でよろしいのでしょうか?
あるいは、グッドライフの一部負担金払戻金にある、アに該当する場合、例えば病院窓口で6万円の実費医療費を支払うと、1万円分が算式によらず一部負担金払戻金として申請により還付を受けられるのでしょうか?
3割負担の中で、自己負担上限額を超える額を額を一部負担金払戻金とするのか、または自己負担上限額内で、単純に5万円、若しくは2万5千円を差し引いた額を一部負担金払戻金とするのか、どちらになるのでしょうか?というのが質問です。
お忙しい中とは存じますが、よろしくご回答お願いいたします。